Homeを感じた女性との結婚

携帯電話なんかない時代だから、連絡の取りようもないかくて私、所長みずからがメンテナンスにかけずり回る羽目に!わが国初めての万博は、観客、スタッフ等々、人を集める力も凄かったが、人の心を惑わす力も強かったといえる。スタッフの一人は、開催中に口説き落とした金髪娘と一緒にフランスへ逃亡。もう一人は、別のパビリオンに二○倍の給料でスカウトきれて、ハイ、サョウナラ。同居の妹は、東京に残しておいたスタッフと結婚したいと言いだす始末。万博後、アトリエ4Aは、まさに四散してしまったのである。その代わりといっては何だが、あの故障続きの事務機器メーカーのブースのコンパニオンとお互いに親しくなり、将来を話し合う仲となった。フランス娘に比べたら、彼女など地味なものである、が、彼女は私の心のよりどころだった。私のどこがいいのかと問えば、「リーダーシップを取って、みんなを引っ張っている姿がいい」と言ってくれた。なぐきめ半分だったのかも知れない。髭まで生やざなくちゃリーダーシップを発揮できない男、建築家だっていうのに、工具を担いで修理ばっかりしている男、そうやって働く苦悩の姿を、浮ついた派手さを求めない彼女は注意深く見ていたのかも知れない。■Homeを感じた女性との結婚「生活産業館」だけでも、七○人~八○人のコンパニオンらがいたが、おとなしい彼女は、あまり目立つ存在ではなかった。が、私は、付き合うほどに彼女にHomeを感じていた。騒々しい万博会場の中にある心のオアシス。うんざりするような大人たちの駆け引き、会社人間、組織人間という本能的動物と化した人間たちに疲れきった私が、ふと帰りたくなるHomeである。

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